はい。こんにちは!
ぺこ(@sekaigurashi)です。
昨日から始まったタラブックスの美術館展示を拝見してまいりましたので速報でお送りします!!
『世界を変える美しい本-Beautiful Books Can Change The World-』展、おすすめですよ。
それでは、どうぞ。
インド・タラブックスとインドの絵本の世界
インド・タラブックスとは?
タラブックスとは、インドの小さな出版社の名前。
インドにある小さな出版社が日本をはじめ世界中の人々に注目されるようになったのは、その驚愕の製本方法と、革新的な手法&組織体制のためではないかだと思います。
まず驚きの製本方法ですが、タラブックスでは全ての工程を手作業で行う製本方法を採用しています。
Sneak peek at the screen-printing process behind the posters that travelled with us to the Frankfurt @Book_Fair . So hypnotising! #fbm17 pic.twitter.com/gm2SM2yPeg
— Tara Books (@TaraBooks) 2017年10月10日
驚くことに、その手作業というのは、なんと紙づくりから。つまり、手漉きの紙を使用しているのです。そして印刷も、機械を使わない「シルクスクリーン」と呼ばれる印刷方法を採用。これは布を使った印刷の方法で、なんと、一度に印刷できるのは1つの色のみ。例えば、その紙に5色利用されているとしたら、その紙に5回インクを塗って、手作業で5回印刷を繰り返したことになります。わお。
タラブックスで出版されているすべての本がこの手作業で行われているわけではないのですが、例えばタラブックスの本を代表する「夜の木」という有名な絵本などは、全てこのシルクスクリーンで印刷されたものです。
もちろん、この方法ではいくら売れたとしても生産できる数には限りがあります。そのため、夜の木の背表紙にはシリアルナンバーが振られています。版を重ねるごとに表紙の絵も変えられており、まさしくあなたが手にしたその本は、世界に1つだけの絵本なのです。
その本からはインクのなんとも言えない匂いがします。
そしてその絵本自体もインドの伝統とモダニズムとを掛け合わせた、とても美しい本です。
これらの絵本は世界的に評価され、国際的な絵本賞を受賞。いまや十万部を超えるベストセラーをいくつも抱えているそうです。
そんな出版社ならさぞかし大きな組織で、大きなビルに拠点を構え・・・などと想像しますよね?
しかしタラブックスのスタッフ15人ほどのチームで、さらに印刷する職人たちが29人ほどいるのだそう。つまり、タラブックスは50人にもみたないスタッフで運営されているのです。
でも、どうやって?
そこには、「インド」というイメージとはかけ離れた、とても民主的な組織がありました。それはまるで、日本のベンチャー企業のような新しい企業の雰囲気。
この組織のインドにおける革新性は、代表をつとめる2人のギータ氏のファッションからも伝わるなと思いました。(インドではまだショートヘア、しかもベリーショートのヘアスタイルの女性は少ない)
詳しくは、今回の展示会で公開されているお2人のインタビューで詳しく語られていたのでぜひご覧になってください。
板橋区立美術館の方との連携で生まれた絵本の美術展
ただ美しい本を作っているわけではないタラブックスの衝撃
今回の美術館の展示。板橋美術館の館長の並々ならぬ努力のたまものだと感じました。(どの美術館でももちろん展示というものはそういう努力の結晶なのだと思いますが)
We’re excitedly gearing up for the #TaraExhibition at the @itabashi_art_m . Mata ne in November, Japan!#ArtExhibition #Japan #HandmadeBooks pic.twitter.com/xsX0cJz0JW
— Tara Books (@TaraBooks) 2017年7月26日
インドに赴き、今回の展示に必要なもの、本に関わるオブジェや原画などなどの選別。展示方法など。美術館側と、タラブックスとの絆の深さを感じる美しい展示でした。
美術館館長さんとタラブックスとの関係のはじまりは、海外の絵本賞会場でのギータ氏のスピーチだそう。それまでは、タラブックスは「美しい本を作る出版社」という認識だったが、そのスピーチを聞いて、タラブックスが「ただ美しい本をつくっているわけじゃない」ということを感じたそうです。
というのも、タラブックスは、インドの各地方に根付く少数民族による伝統的な工芸や絵画の手法などをいかに「アート」としてその価値を広めていくかということを1つの価値観として持っています。あまり高く評価されてこなかったそれらの伝統的な工芸・絵画などはインドのマーケットなどで安く取引されている現実があるのだそう。
それらの伝統的な「美」とモダニズムをうまく掛け合わせ、インドの内外にその価値を発信する。そして描く物語自体も、口承で伝えられてきたインドの伝統的な物語に大きなヒントを得て作られています。
さらに、子供や女性の権利の問題や、ゴミなどの社会問題にもフォーカスし、それらを本づくりに取り入れています。
Bring your kids to Book Building for a fun art activity workshop this Saturday! https://t.co/alQqoz0pOQ
Register: nancy@tarabooks.com pic.twitter.com/Kwv8lniZBf— Tara Books (@TaraBooks) 2017年8月31日
私が展示の中で印象的だったギータ氏の言葉をあげると、「物語をつくるときに大切にしていることは、男性の数だけ女性がいるのを忘れないこと。女性だって主人公にはなれるのだから」というもの。ちょっと言葉の細部は違うと思いますが、”男性と同じだけ女性がいるのも忘れない。女の子だって主人公になれる”という趣旨の言葉はとても印象に残りました。
そう、まさに、タラブックスという出版社は、「美しい本を作っているだけじゃない」出版社なのです。
Beautiful Books Can Cahnge The World「美しい本は、世界を変えることができる」
これが、今回の展示会のタイトルです。
「So, How?(でも、どうやって?)」
その疑問がこの展示をじっくり見たら、わかるのではないかなと思います。
インド美術・インド文化のとても良い展示
インドの少数民族のアートに重きをおいているタラブックスの美しい絵本たちは、正にインドの伝統的な美を体感するにはうってつけの機会になっているのではないかと感じます。
「夜の木」を始めとするタラブックスの絵本で採用されている、インドの伝統的な民族画であるゴンド画に焦点を絞った展示や、使い古したサリーを裏面に使用している絵の立体的な展示、女性が指を使って描く絵画の展示や、木版画や絵語り師に関するドキュメント映像など、インドの空気感を堪能するにはばっちり。
開催中の「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」展では、南インドの出版社「タラブックス」の全容をご紹介します。着想と編集技法の斬新さ、デザインや造本のオリジナリティなど、インドから世界に向けた、しなやかな本づくりをお楽しみください!https://t.co/MK8eNgCXqP pic.twitter.com/BP04Ekcfy2
— 板橋区立美術館 (@itabashi_art_m) 2017年11月26日
インドの美の世界に興味があるなら、ぜひともじっくり堪能したい展示ではないかと思われます。
また、今回の会場には、こんな面白い展示スペースもありました。すごーく、インドっぽくて良い!
とくに、気に入ったのは、左側の絵。題名は、『インド映画の広告に見る九つの感情』愛(現代の)だって。確かに。
インドに興味がある人でなくても楽しめる「美」の世界
インドにさして興味がない人にとっても「美しいもの」というのは、誰しをも惹き付けるもの、、ですよね?
タラブックスの絵本の特徴のひとつは、インドの伝統をそのまま本にするのではなく、独自のセンスでどこかモダンな作風に仕上げていることではないかと思います。
例えばインド東部ビハール州に伝わるミティラー画で描かれる『水の生きもの(邦題)』という絵本は、どこか北欧の絵画のようなモダンさがあります。
#Waterlife #handmade #madhubani #screenprint on a newborn’s wall. Thanks @dishpish for this! https://t.co/1IVCbI9iR5 pic.twitter.com/eadCGMcoxQ
— Tara Books (@TaraBooks) 2016年9月19日
このツイートにはないですが、今回美術館で展示されている亀の絵とか特に好き。
こういうものの美しさに原画や手刷りの絵で触れることができるというのは、インドそのものに興味がない人でも楽しめるではないかと思います。
インドでの絵本の壁
Highlights from our presentation on the ways of exploring books & developing teaching resources at @cometmedia. Thanks to all who came! 🙂 pic.twitter.com/VTJnDSMOVY
— Tara Books (@TaraBooks) 2017年8月18日
今回はオープン記念トークが催され、応募すれば無料で聴講することができました。いろいろな話をお聞きすることができましたが、なかでも印象的だったのが、インドにおける絵本の壁の話。
個人的にはかなり興味がある内容なのですが、ここであまり取り上げるのもなぁと思いつつ、せっかくなのでシェアさせてください。
インドでは子供向けの本というのは最近出てきたばかりの新しいジャンルで、本自体が少ないということ。また、絵本という概念が成立するには、字が読める母親が子供と寄り添って本を読んであげるという行為が必要なこと。識字率や収入など、さまざまな点でこのようなスタイルがインド全体で定着するにはまだ少し時間がかかるだろうこと。インドでは、本の中の絵の意味を読み解くという教育があまりなされないこと。それに反して、インドはビジュアルの文化だというパラドックスがあること。
この内容は私がインドでやりたいことにも関わってくる気がして、もっと良く学んで、考えていきたい内容だなと思いました。
板橋区立美術館の魅力と行き方をご紹介
板橋区立美物館って、どこにあるの?
正直に申し上げて、わたくし、板橋区立美術館に行くのは初めてでした。なので、はじめて行くにあたって、どんな場所なのか少々調べたのですが、するとこんな記事がでてきました。
https://sirabee.com/2017/07/01/20161190055/
「永遠の穴場」なんか心惹かれる場所です。
場所はもちろん、東京の板橋区。私は都営三田線の終点「西高島平」駅から歩いていきました。徒歩十数分というくらいです。
辺りはかなりの住宅街。あまりお店などは見かけない街です。同じ東京でありながら、初めて訪れた地。新鮮です。
どうやら、赤羽あたりからバスで行くという方法もあるみたいです。利用しやすい行き方を探してみてください。
美術館の周りは公園のようになっていて、子供たちがたくさん遊んでいました。
美術館につくと、エントランスから凝ったつくりになっていて、わくわく。
2Fが展示室になっているのですが、1Fにはタラブックスグッズを販売する仮設のショップと、カフェを併設。
カフェ・ボローニャ Café Bolognaというカフェで手づくりのパンやお菓子が食べられます。10:30~17:00(ラストオーダーは16:30)。カレーも食べましたが、パンの方が美味しかったです。
”永遠の穴場”板橋区立美術館。なんか独特の魅力があるように感じました。たくさんの愛が詰まっているような・・・。
世界を変える美しい本 -インド・タラブックスの挑戦-は、2017.11.25 satから、2018.1.8 monまで。
- 営業時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)
- 休業日:月曜日(1月8日は祝日のため開館)、12月29日〜1月3日
- 観料金:一般650円、高校・大学生450円、小・中学生200円
まるでインドを覗いてきたかのような、ちょっとした旅気分を味わえるインドの雰囲気満載な展示。ぜひこの展示でインドとタラブックスの世界を体感してみてください。
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①『タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる』
インドの本も書かれているKailasのお2人によるタラブックスの本!
②『世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦』
今回の展示の公式図録!巻末にはロングインタビューも。